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みなし弁済規定の適用に関する裁判例

4 みなし弁済規定の適用に関する裁判例


みなし弁済とは,旧貸金業法43条に定められていたものであり,債務者が任意に利息を支払った場合には,本来無効であるはずの利息制限法を超えた利息が一定の要件の下,有効になるというものです。 現在はみなし弁済の規定は廃止されており,現在の取引について,みなし弁済が成立する余地はありません。 また,現在,みなし弁済の要件は厳格に解釈されているため,過去の取引についても,みなし弁済の成立が認められるのは極めて稀なこととなっています。

現在,みなし弁済の成立を主張する貸金業者はほとんど居ませんが,取引当時,みなし弁済が成立すると信じていたとして,善意の受益者であることを主張するために,みなし弁済の成立要件に関する裁判例が引用されることがあります。


●最高裁判所第2小法廷平成2年1月22日判決(民集4巻1号332頁)

【問題となった争点】

貸金業法43条1項にいう『債務者が利息として任意に支払った』及び同条3項にいう『債務者が賠償として任意に支払った』の要件(任意性の要件)の意義。


【判決の要旨】

「法43条1項にいう『債務者が利息として任意に支払った』及び同条3項にいう『債務者が賠償として任意に支払った』とは,債務者が利息の契約に基づく利息又は賠償額の予定に基づく賠償金の支払に充当されることを認識した上,自己の自由な意思によってこれらを支払ったことをいい,債務者において,その支払った金銭の額が利息制限法1条1項又は4条1項に定める利息又は賠償額の予定の制限額を超えていることあるいは当該超過部分の契約が無効であることまで認識していることを要しないと解するのが相当である。」


【解説】

本判決は,貸金業法43条1項の『債務者が利息として任意に支払った』及び同条3項の『債務者が賠償として任意に支払った』というためには,借主が,支払った金銭の額が利息制限法の上限金利を超えていることや,上限金利を超えているため無効であることまで認識している必要はないとして,法43条1項にかかるみなし弁済の成立要件を緩やかに解したものです。 本判決は法43条の解釈についていわゆる「緩和説」を採用したものと評され,本判決以降,貸金業者の側からは,みなし弁済の成立要件は緩やかな解釈が許されると主張されるようになりました。


【ポイント】

支払金が制限超過利息であること又は制限超過利息の部分の契約が無効であることまでは認識しなくても,「任意に支払った」としてみなし弁済は成立する。


●東京高等裁判所平成9年11月17日判決(金融法務事情1544号67頁)

【問題となった争点】

貸主と借主との間で,継続的な金銭消費貸借取引を行なう旨の基本契約が締結されている場合において,ATMによって借入と返済を繰り返していた場合,ATMによる返済は,返済のための現金の投入後に書面が排出され,利息,損害金に充当される金額や元本に充当される金額が利用者に明らかになるため,返済のための現金投入前に,充当されるべき利息,損害金及び元金の額が利用者には認識できないから,貸金業法43条1項の『利息として』又は『賠償として』支払ったとはいえないのではないか。


【判決の要旨】

「『利息として』又は『賠償として』支払ったと言うためには,債務者が利息の契約に基づく利息又は賠償額の予定に基づく損害金の支払に充当されることを認識した上で支払うことを要するものであり,そのように認識した上で支払ったと言うためには,債務者において,ATMにより返済をすれば約定に従い機械的に利息,損害金,元金に充当されるという抽象的な認識を有するのみでは足りず,具体的に一定の利息,損害金,元金に充当されるという認識を有することが必要である。」 ATMでは,「支払前に利息,損害金,元本への充当予定額が示されず,支払完了後に受取証書が機械的に発行されるという場合には,その受取証書において充当額が記載されているとしても,それは支払完了後に控訴人(※注:貸主)が債務者に対して行った充当関係の告知であって,債務者がそれに対して異議を述べなかったとしても,それだけでは債務者において『利息として』又は『賠償として』支払ったとすることはできない」 「『利息として』又は『賠償として』支払ったと言うためには,受取証書に記載される利息,損害金の金額が債務者の返済行為完了前に債務者において充当予定額として認識できるようになっていなければならない。」


【解説】

本裁判例は,法43条のみなし弁済の成立要件を厳格に解釈して,弁済の際にATMの画面上に利息,損害金,元本への充当予定額が示されない限り,みなし弁済の適用を否定したものです。


●最高裁判所第1小法廷平成11年1月21日判決(民集53巻1号98頁)

【問題となった争点】

預貯金口座への払込の場合には弁済者の請求のあった場合に限り18条書面の交付義務があるとする貸金業法18条2項との関係で,弁済者の請求がなく,18条書面が交付されない場合にも,みなし弁済が成立するためには,18条書面の交付を別途要するか。


【判決の要旨】

みなし弁済が成立するためには,「支払が貸金業者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってされたときであっても特段の事情のない限り,貸金業者は,右の払込みを受けたことを確認した都度,直ちに,同法18条1項に規定する書面(以下「受取証書」という。)を債務者に交付しなければならないと解するのが相当である。けだし,同法43条1項2号は,受取証書の交付について何らの除外事由を設けておらず,また,債務者は,受取証書の交付を受けることによって,払い込んだ金銭の利息,元本等への充当関係を初めて具体的に把握することができるからである。」


【解説】

旧貸金業法18条2項は,有貯金口座への払込の場合には,弁済者の請求のあった場合に限り18条書面を交付すればよいと規定していたため,18条2項に該当する場合には,18条書面が交付されなくともみなし弁済が成立するかどうかが問題となっていました。 本判決は,法43条のみなし弁済の成立要件を厳格に解釈し,利息制限法を超える利息等の支払が,法18条2項の預貯金口座への払込の方法でなされ,弁済者から18条書面の交付が請求されない場合にも,みなし弁済が成立するためには,18条書面が必要であるとしたものです。


【ポイント】

法18条2項の預貯金口座への払込の方法でなされ,弁済者から18条書面の交付が請求されない場合にも,みなし弁済が成立するためには,18条書面が必要である。


●最高裁判所第2小法廷平成16年2月20日判決(民集58巻2号475頁)

【問題となった争点】

①天引利息にみなし弁済の適用があるか,②17条書面の記載事項,③18条書面の交付時期。


【判決の要旨】

①について

「法43条1項の規定が利息制限法1条1項についての特則規定であることは,その文言上から明らかであるけれども,上記の同法2条の規定の趣旨からみて,法43条1項の規定は利息制限法2条の特則規定ではない」として,天引利息へのみなし弁済の適用を否定しました。


②について

「貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として,貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨,目的(法1条)と,上記業務規制に違反した場合の罰則が設けられていること等にかんがみると,法43条1項の規定の適用要件については,これを厳格に解釈すべきものである。」 「17条書面には,法17条1項所定の事項のすべてが記載されていることを要するものであって,その一部が記載されていないときには,法43条1項の適用の要件を欠く」


③について

「17条書面の交付の場合とは異なり,18条書面は弁済の都度,直ちに交付することを義務付けられているのであるから,18条書面の交付は弁済の直後にしなければならないものと解すべきである」


【解説】

本判決は,これまでのみなし弁済に関するいわゆる「緩和説」(みなし弁済の成立要件を緩やかに解する立場)から,いわゆる「厳格説」(みなし弁済の成立要件を厳格に解釈する立場)への転換を明確にした判決です。 本判決では,みなし弁済成立の要件について「厳格に解釈すべきものである」とした上で,①天引利息にはみなし弁済の適用のないこと,②17条書面はすべての事項を漏れなく記載すべきこと,③18条書面は弁済後直ちに交付すべきこと(20日後では認められないこと)を明らかにしたものです。


【ポイント】

①天引利息にはみなし弁済の適用はない,②17条書面はすべての事項が漏れなく記載されなければならない,③18条書面は弁済後直ちに交付されなければならない(20日後では認められない)。


●最高裁判所第2小法廷平成16年2月20日判決(民集58巻2号380頁)

【問題となった争点】

18条1項記載事項が記載された書面(18条書面)で振込用紙と一体となったものを利用して,貸金業者の銀行口座に対する払込みの方法によって利息の支払をした場合に,弁済の都度直ちに交付するとされる18条書面の要件を満たしているか。


【判決の要旨】

「18条書面は,弁済を受けた都度,直ちに交付することが義務付けられていることに照らすと,貸金業者が弁済を受ける前にその弁済があった場合の法18条1項所定の事項が記載されている書面を債務者に交付したとしても,これをもって法18条1項所定の要件を具備した書面の交付があったということはできない。」


【解説】

本判決も,みなし弁済に関するいわゆる「厳格説」の立場に立ったものです。 本判決では,18条書面というためには,「弁済後」に,18条記載事項を記載したものを直ちに交付することが必要であり,弁済前に18条記載事項を記載したものを交付しても認められないと判断されています。


【ポイント】

18条書面の交付が弁済後でない限り,みなし弁済は成立しない。


●東京高等裁判所平成16年3月16日判決(判タ1148号166頁)

【問題となった争点】

過去に一度,18条書面の交付を怠ったと判断された場合に,18条書面の交付が認められることを前提に残高を計算し記載したその後の受取証書は,18条書面の要件を満たすか。


【判決の要旨】

過去の返済について「18条書面の交付が認められない以上,その返済については,貸金業法43条のみなし弁済の規定の適用がないことになる。その適用があることを前提に作成されたその後の領収書兼残高確認書の記載は,充当関係を正しく記載していないことになるから,その後の返済についても,このような領収書兼残高確認書が交付されたことをもって,18条書面の交付があったものと認めることはできない。」


【解説】

本裁判例は,過去に一度みなし弁済を否定されると,その後の18条書面を正しい残高に記載し直さない限り,その後の取引についてもみなし弁済は適用されないことを明らかにしたものです。


●最高裁判所第1小法廷平成17年12月15日判決(民集59巻10号2899頁)

【問題となった争点】

リボルビング方式の貸付けが行われる場合,貸付けの相手方に17条書面として交付される書面には,「返済期間及び返済回数」や各回の「返済金額」は記載されず,元利金の返済方法に関する約定及び次回の最低返済額が記載されるにとどまるが,これは17条書面の要件を満たすか。


【判決の要旨】

17条書面はすべての事項を漏れなく記載すべきことを判示した最高裁判所第2小法廷平成16年2月20日判決を引用した上,「当該貸付けに係る契約の性質上,法17条1項所定の事項のうち,確定的な記載が不可能な事項があったとしても,貸金業者は,その事項の記載義務を免れるものではなく,その場合には,当該事項に準じた事項を記載すべき義務があり,同義務を尽くせば,当該事項を記載したものと解すべきであって,17条書面として交付された書面に当該事項に準じた事項の記載がないときは,17条書面の交付があったとは認められず,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。」

リボルビング契約の場合について,「確定的な返済期間,返済金額等を17条書面に記載することが不可能であるからといって,上告人(※注:貸主)は,返済期間,返済金額等を17条書面に記載すべき義務を免れるものではなく,個々の貸付けの時点での残元利金について,最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等を17条書面に記載することは可能であるから,上告人(※注:貸主)は,これを確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずるものとして,17条書面として交付する書面に記載すべき義務があったというべきである。」


【解説】

本判決は,リボルビング方式の場合,個々の貸付けの際に,確定的な「返済期間及び返済回数」や各回の「返済金額」を17条書面に記載することは不可能であっても,個々の貸付けの時点での残元利金を基準に,返済期間,返済金額等を記載することは可能であるから,これを記載しない限り,17条書面の要件を満たさないと判断したものです。

現在では,平成18年の貸金業法の改正により,リボルビング方式のような極度方式基本契約においては,17条書面に「返済期間及び返済回数」の記載は不要となっています(平成19年12月19日施行)。


【ポイント】

リボルビング方式であっても,返済期間及び返済回数が記載されていなければ,みなし弁済は成立しない。


●最高裁判所第2小法廷平成18年1月13日判決(民集60巻1号1頁)

【問題となった争点】

①貸金業法施行規則15条2項に基づき,貸金業法18条1項2号所定の「契約年月日」の記載に代えて「契約番号」が記載されていた場合,このような書面の交付をもって,18条書面の交付の要件を満たすか。

②期限の利益喪失特約は利息制限法1条1項に反しないか。

③期限の利益喪失特約の下で,債務者が,利息として,制限利息を超える金額を支払った場合,制限超過部分の支払は,貸金業法43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」ものといえるか。


【判決の要旨】

①について

「18条書面の記載事項について,内閣府令により他の事項の記載をもって法定事項の記載に代えることは許されないものというべきである。」 施行規則15条2項の規定のうち,「当該弁済を受けた債権に係る貸付けの契約を契約番号その他により明示することをもって,法18条1項1号から3号までに掲げる事項の記載に代えることができる旨定めた部分は,他の事項の記載をもって法定事項の一部の記載に代えることを定めたものであるから,内閣府令に対する法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効と解すべきである。」

②について

期限の利益喪失特約は,借主に対して,「期限の利益を喪失する等の不利益を避けるため,本来は利息制限法1条1項によって支払義務を負わない制限超過部分の支払を強制することとなるから,同項の趣旨に反し容認することができ」ない。 期限の利益喪失特約のうち,借主が「支払期日に制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は,同項の趣旨に反して無効であ」る。 借主は,「支払期日に約定の元本及び利息の制限額を支払いさえすれば,制限超過部分の支払を怠ったとしても,期限の利益を喪失することはなく,支払期日に約定の元本又は利息の制限額の支払を怠った場合に限り,期限の利益を喪失するものと解するのが相当である。」

③について

「本件期限の利益喪失特約は,法律上は,上記のように一部無効であって,制限超過部分の支払を怠ったとしても期限の利益を喪失することはないけれども,この特約の存在は,通常,債務者に対し,支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り,期限の利益を喪失し,残元本全額を直ちに一括して支払い,これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え,その結果,このような不利益を回避するために,制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになるものというべきである。したがって,本件期限の利益喪失特約の下で,債務者が,利息として,利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には,上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り,債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である。」と判示して,期限の利益喪失特約がある場合,みなし弁済は成立しない旨判示しました。


【判決の意義】

本判決は,①施行規則15条2項は無効であり,契約番号による省略は認められないこと,②期限の利益喪失特約のうちの制限超過部分に関する効力は利息制限法1条1項に反し無効であること,③期限の利益喪失特約下の弁済にみなし弁済は成立しないこと,を明らかにしたものです。 ほとんど全ての貸金業者は,期限の利益喪失特約を定型的に設定しているため,本判決により,みなし弁済が成立する余地はほぼなくなることとなります。


【ポイント】

①契約番号による18条書面の記載の省略は認められない,②制限超過利息部分に関する期限の利益喪失特約は無効であり,この規定がある場合にはみなし弁済は成立しない。